帰無説

死の本質は、人格の帰無である。

 

マクスウェルの悪魔をご存知だろうか。

マクスウェルの悪魔にまつわる研究によれば、エントロピーが増大するのは、観測した結果を忘れた時であるらしい。

人間は二度死ぬなどと言われることがあるが、二度目の死はいかにも、これではないか。

一度目の死は、自らが思考を止め自分自身とその世界を忘れてしまうことである。

二度目の死は、生前の知り合いが、その者を忘れてしまうことである。

 

人格の帰無とは一度目の死を指すのであろう。

世界の全てから忘れられた時、その対象は本当に死んだことになる。